「播磨国妖綺譚」上田早夕里著
播磨国の燈泉寺の草庵に、律秀、呂秀の兄弟が暮らしていた。僧の呂秀は薬草園をあずかっており、薬師の律秀の作業を手伝っている。
ある日、寺の僧がやって来て、妙な噂が立っていると伝えた。井戸をのぞいて、水面に自分の顔が映らなければ3年以内に死ぬというのだ。3人で井戸をのぞいてみると、なぜか呂秀だけに鬼のような異形のものが見えた。そして、何者かが「今夜、行く。待っておれ」と囁いたのだ。
幼い頃から呂秀には物の怪を見る力があった。夜更けに寝所に何かがやって来た。呂秀に「わしを使わぬか」と言う。自分は陰陽師が使う式神で、元の主は呂秀の祖先の蘆屋道満だと。
法師陰陽師が活躍する室町時代を舞台にした時代小説。
(文藝春秋 1870円)