「開城賭博」山田正紀著
慶応4年3月、官軍の江戸総攻撃の直前、薩摩屋敷で勝海舟と西郷隆盛の会談が行われた。「江戸城明け渡し」の条件として「徳川慶喜は備前藩にお預け」などが挙げられていた。備前藩に預けては、慶喜が打ち首や切腹などの処分を受ける恐れがある。徳川家としては受け入れがたい。西郷も、新政府が討議して出した条件を自分の一存で撤回するわけにはいかない。堂々巡りの果てに、勝が提案した。
「西郷さん、ここは1つ、チンチロリンで決めることにしねえかい」〈表題作〉
他に、明智光秀が本能寺を襲撃する前に食べたのは三河うどんか讃岐うどんかでもめる「恋と、うどんの、本能寺」など、奇妙な設定で書かれた短編6編。
(光文社 2090円)