「新風記」吉川永青著
日向の里長、ウガヤフキアエズは日読みを行って刈り入れの日を決める。嵐の前触れを見て、「このたびの刈り入れは、4日で終えねばならん」と命じた。四男のホホデミがヌマクラジの田の刈り入れを手伝いに行くと、子どもが足が膿(う)んで熱を出している。次男のイナヒの剣で膿を切ると、驚くほどきれいに切れた。その剣は、干し肉と交換して手に入れたものだった。これだけの技を持つ鍛(かぬち)がいれば、良い鍬(くわ)が作れて、やせた土地でももっと多くの米が取れるのではないか。
次の夏、ホホデミらはその剣を手に入れた面土に向かう。そこにはおびただしいほどの田が広がり、その眺めにホホデミは言葉を失った。
日本の興りを描く壮大な歴史小説。
(講談社 1980円)