「花折」花村萬月著
高名な日本画家を父に持つ鮎子は、東京芸大に進学し、取手のキャンパス近くで一人暮らしを始める。
ある日、鮎子はキャンパスの裏山に住むホームレスのイボテンと知り合い、彼が描いた利根川の風景画に圧倒される。鮎子は求められるままイボテンに体を許す。鮎子の部屋で寝起きするようになったイボテンは、執拗(しつよう)に彼女の体を求め、責め立てる。
夏になり、鮎子が帰省をすることを告げるとイボテンは彼女を殴り、裏山に戻ってしまう。帰省した京都の実家には作家の我謝が寄宿していた。「花折峠」を取材する我謝の運転手を務めた鮎子は、彼とも交わる。我謝とのセックスで初めて快感を得た鮎子は、彼について沖縄に向かう。
性に開眼しながら画家として覚醒する鮎子の青春を描く長編小説。
(集英社 836円)