ペットブームに考える動物の生態を知る本特集

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「おもしろいネズミの世界」渡部大介著

 コロナ禍によって強いられたライフスタイルの変化は、以前からの猫ブームにも拍車がかかり、犬や猫をはじめ、動物と暮らす人が急増している。そこで今週は、動物関連の本を特集。お馴染みの動物や知られざる動物の生態からペットのみとりまで、動物と暮らす人もまだの人にもお薦めの5冊を紹介する。



 世界にいる約5400種もの哺乳類のうち、約2300種はげっ歯目というネズミの仲間。真のネズミであるネズミ形亜目だけで約1500種もいて、リスやビーバーなど同じげっ歯目の仲間らと比べても群を抜いて多い。ネズミ形亜目は地球で最も繁栄している哺乳類なのだ。

 そんなネズミの知られざる素顔を教えてくれる生き物テキスト。

 現在、日本で確認されているげっ歯目は31種類。国内で最も広く分布しているアカネズミとヒメネズミをはじめ、沖縄、鹿児島の奄美大島と徳之島だけにすむ固有種のトゲネズミ類など、それぞれのネズミについて解説。

 さらに人気者のカピバラやマーラなど動物園で会えるネズミたちや、味覚が敏感で、味に対する警戒心も強く、退治用の毒餌などほとんど見破ってしまうなど、その身体能力や生態まで。元動物園飼育員が、さまざまな角度からネズミの奥深い世界を案内してくれる。

(緑書房 1980円)

「イヌは愛である」クライブ・ウィン著 梅田智世訳

 1万5000年以上も共に暮らしてきたヒトとイヌには、特別な絆がある。それは、イヌには他の動物にはない、人間を理解するための認知能力が備わっているからだという学説が1990年代に流布。しかし、著者がいくら研究を進めてもイヌ固有の認知能力があるという結論を得ることはできなかったという。そこで、まったく異なる独特の能力があるのではと疑い、ある結論に至る。

 そのキーワードは、「愛」だ。科学者としてその言葉を持ち出すことにちゅうちょはするが、愛こそがイヌを理解するためのカギだと認めざるを得ないとまで言い切る。

 イヌと飼い主が一緒にいる時、愛し合う人間カップルのように両者の心拍が重なるという。他にも、人間が愛を感じている時に起きるオキシトシンの増加など、飼い主と一緒にいるイヌの脳内科学物質の変化や、イヌの遺伝子の秘密まで。最新の知見からイヌと人間の特別な関係を解き明かす。

(早川書房 2310円)

「夜のイチジクの木の上で」中林雅著

 アフリカやアジアに広く分布する動物「シベット」に魅せられて動物学者になった著者の観察記。

 シベットは、ジャコウネコ科に属する動物の総称で、ハクビシンもその仲間だ。著者は、高校時代に参加したボルネオ島でのジャングル体験スクールでシベットに遭遇。見た目は明らかに食肉目なのに、高さ30メートルの樹上で果実を食べているかと思えば、地上を歩き回るなんとも不思議なその生態に魅了される。

 大学院生の時にボルネオ島でシベットの研究に本格的に着手。島に生息する8種のシベットのうち、頻繁に樹上を利用する半樹上性のパームシベット亜科4種がどのように共存しているかを突き止めるため、シベットを捕獲しては発信機をつけて追跡、その行動を記録する。時には彼らが活動する高さ50メートルの木に登ったり、夜行性のシベットを観察するため55日間徹夜するなど、8年間に及ぶフィールドワークとその成果をつづる。

(京都大学学術出版会 2420円)

「身近な『鳥』の生きざま事典」一日一種著

 鳥は、もっとも身近な野生動物で、家の近所を散歩するだけで、多くの種類の鳥に出合うことができる。日常生活でよく見かけるそんな身近な鳥たちの、知っているようで知らない生態を紹介するイラストブック。

 例えば、昆虫や小動物を木のトゲや有刺鉄線に串刺しにするモズの「ハヤニエ(早贄)」。他の鳥には見られないこの変わった行動は、貯食やなわばり誇示など、その理由について諸説あるが、近年の研究で、主な理由のひとつが婚活と分かったという。繁殖期に入るころ、オスはハヤニエを食べることで「よい歌が歌える」ようになるそうだ。

 他にも、「ツバメが低く飛ぶと雨」のことわざの真相をはじめ、空き家の戸袋を利用するムクドリの個性豊かな巣作り、滑り台や鉄棒代わりの電線で「遊ぶ」カラス、さらに一瞬で終わる交尾の秘密、かわいく首をかしげる理由など。身近な鳥たちの情報が満載。

(SBクリエイティブ 1540円)

「ペットが死について知っていること」ジェフリー・M・マッソン著 青樹玲訳

 時に家族を超えた存在でもあるペットの死は、飼い主に大きな喪失感をもたらす。一方の動物たちには、死という概念がないとされてきた。しかし、実際には死の瞬間を迎えた犬や猫に、独特の表情で見つめられたという飼い主は多い。それは最後の別れを悟り、深刻な場面であることを気づいているかのようだと多くの人が語る。動物の感情世界について多くの著作を持つ著者自身も、留学先のインドでの愛犬との劇的な死別をはじめ、何度もその死に接し、犬にはそれが分かると確信しているという。

 老いた愛犬ベンジーとの刻々と迫る別れの時をどう迎えるべきか自問する一方で、死期が迫った施設の入居者に寄り添う猫、さらに野生動物と人間の交流など、さまざまなエピソードを紹介しながら、ペットの死と、その喪失体験が人間にもたらす心の動きについて考察する。

(草思社 1980円)

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