「猫に学ぶ」ジョン・グレイ著 鈴木晶訳
退屈とは自分以外に誰もいないときに感じる恐怖だ。人間は自分から逃げ出すことで幸福になろうとするが、猫は自分しかいなくても幸福である。それが猫と人間の最大の違いである。
フロイトが見抜いたように人間には不気味な悲惨さが付き物で、それから解放されるために、人は精神分析など、さまざまな療法を考えだした。それらは他人との共生に伴う不快感を軽減してはくれるが、取り除いてくれるわけではない。愛猫家はしばしば、猫に人間の感情を投影して擬人化していると非難されるが、愛猫家が猫を愛するのは、自分とあまりに違っているからなのだ。
猫の日常を見て、人生の意味と幸福について考える。人生の重荷を感じている人も、ちょっと心が軽くなるかも。
(みすず書房 3300円)