「人は愛するに足り、真心は信ずるに足る」中村哲、澤地久枝著
2年前にアフガニスタンで凶弾に倒れた中村哲氏への聞き書き集。氏の活動に感銘を受けた作家の澤地氏が、半生とその活動への思いを聞き、書き留めた。
中村氏とアフガニスタンの関係は、日本キリスト教海外医療協力会の要請で1984年に、パキスタンのペシャワールに赴任したことに始まる。当時はソ連によるアフガニスタン侵攻のさなかで、多くの難民が診療に押し寄せ、氏はゼロ以下の設備・備品の中で全員に対応。しかし、医療行為を続けていくことにやがて限界を感じる。
清潔な飲料水と十分な食べ物さえあれば、8、9割の人は命を落とさずにすむと、医師でありながら干ばつ対策に取り組み始める。
幼少の頃の思い出や家族のことなど、個人史にも触れながら、現地への思いを熱く語る。
(岩波書店 1078円)