大門剛明(作家)

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11月×日 体重計の前で絶句する。糖質制限よ、お前もか……。8月からジムに通い始め、さらに先月から糖質制限をしたのに全く体重が変わらない。タイトルに惹かれ、石川威弘著「気まぐれ断食」(SBクリエイティブ 1485円)を手に取ったのはそういう敗北感の中だった。ストイックにやるより、気が向いたときにやってみて、無理なら途中で止めてもいいと思うことが成功につながるそうだ。本書には16時間断食から1日断食、2日断食など各種方法が紹介されている。チェックシートで自分に向いた断食がわかり、私は3日断食にチャレンジすることにした。

12月×日 早速ファスティング開始だ。全く食物を摂らないのではなく酵素を摂取するのがいいらしい。梅湯や野菜の搾りかすだけの食事は糖質制限とはまるで違う。ひとことで言って腹減った。くそ、最初なので1日だけにしておけばよかった。すりこぎが大してうまくない魚肉ソーセージに見えてくる。重症だ。

12月×日 ようやく断食の3日が明ける。ただすぐには普通の食事に戻れない。断食期間と同じだけ回復食の期間がいる。流動食から「まごはやさしいわ」(ま=豆。ご=ごま、など)原則にもとづき、粗食に移行していく。胃が小さくなったのか、あまり量は欲しなかった。だがコーヒーが欲しい。牛乳が飲みたい。自分はカフェイン中毒、カゼイン中毒だったのか。

12月×日 ついに回復食も終了。接着剤で固定されているようだった体重計の針が大きく左にずれている。始める前から3キロ減っていた。感無量。成功だ。ただかなりつらかった。3日断食と言っても準備食、回復食をあわせると1週間だし、リバウンドがあるので注意すべきというし、これからも節制しなければいけないようだ。ジムへも毎日通おう。カフェインやアルコールも控えなければ……。そのときふと思う。あれ、これって「気まぐれ」だったのだろうか……。ううん、まあいいか。

【連載】週間読書日記

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