「徴産制」田中兆子著
2092年、国民投票で徴産制が承認され、翌年から施行される。数年前の新型インフルエンザの流行で若い日本人女性の200万人以上が犠牲になり、国家を維持するために導入されたのが徴産制だ。日本国籍を有する満18歳から30歳までの男子すべてに性転換手術で最大24カ月、女性になることを課し、子どもを産ませる、兵役ならぬ産役だ。
アキタの農家の家で育ったショウマは、将来の見通しが立たない暮らしを何とかしたいと応募する。産役につけば国から給料が出る上に、志願者には一時金も上乗せされ、出産時には報奨金も出るからだ。期待と不安を抱えて女になったショウマは、自分の容姿にがっかりする。男時代のままのブスだったからだ。
女になった5人の男たちを描く連作集。
(新潮社 737円)