「蝶のしるし」呉佩珍他編、白水紀子訳
しばらく居候することになった張の弟が冷蔵庫の中を漁って、白小姐が作ったコーンスープを見つけた。「これって、何なの?」。スープには黒カビの塊が浮いていた。
張は白がマスクを分けてほしいと頼んだとき、「僕と結婚したら僕のマスクはぜんぶ君のもの」と言って白を唖然とさせた。翌朝、スープのいい匂いで目を覚ましたとき、白は仲直りするつもりだと張は思ったのだが、彼女は「私たちしばらく会わないことにしましょう」と言った。白は自分を愛してくれる人をいわれなく裏切ろうとしていて、その償いの気持をスープに込めたのだ。(江鵝著「コーンスープ」)
台湾の女性作家の作品8編を収載。
(作品社 2640円)