「シャーロック・ホームズの建築」北原尚彦文 村山隆司絵/図
名探偵シャーロック・ホームズが誕生して135年。長編4作と短編56作からなるシリーズは、いまだに世界中で愛読され、聖書に次ぐベストセラーとも呼ばれる。
本書は、その物語内の記述から、各事件の舞台となった建物と内部の間取りを忠実に再現して解説するこだわりのビジュアルガイドブック。
まずは、ホームズと相棒のワトスン博士の住居であり、依頼人から話を聞く仕事場でもあるかの有名な「ベイカー街221B」の部屋から。
221Bは、同じ外観デザインが何軒も連なる集合住宅の「テラスハウス」の一軒。Bは2番目の意味で221に住所が2つあることを表す。
英国ではテラスハウスは、法律で労働者階級用から貴族用まで4段階に格付けされており、221Bは格付け2~3位の中間といった物件らしい。
221Bの1階はご存じ大家のハドスン夫人の住居で17段の階段を上った2階がホームズたちの住居。2階には居間とホームズの寝室、複数の物置(ランバールーム)があり、ワトスンの寝室は3階にあるとされる。
長年、ファンを悩ますのが「マザリンの宝石」という作品だけに登場するホームズの寝室と居間をつなぐ秘密の出入り口だ。1級建築士の村山氏は、物語との整合性を保つためにリフォームで増床されたという設定で、リフォーム前と後の部屋の間取りを描く。
ほかにも、第1短編集「シャーロック・ホームズの冒険」で巻頭に登場する「ボヘミアの醜聞」の舞台「ブライオニー・ロッジ」や、世界一有名な密室殺人の物語「まだらの紐」の現場となる「ストーク・モーラン屋敷」など、全17物件を網羅。
シャーロッキアンはもちろん、ミステリーファン、そして建築好きまで楽しめるお薦め本。
(エクスナレッジ 2200円)