「編集者とタブレット」ポール・フルネル著 高橋啓訳
編集者のロベール・デュボアは研修生にタブレットを渡された。ムニエ会長からの伝言で、この中に、ロベールが週末に読むべきすべての原稿が入っているという。2日で読み切れる量ではなかったが、研修生はタブレットのスクロールの仕方を教えると行ってしまった。
ロベールはデスクの上でもう一度、原稿に鼻をすり寄せたいと思った。自分を閉塞状態に追い込むために、いつも田舎に原稿を持っていくのだが、キーボードを前にどうやって誤字脱字を直すか、思案している。馴染みのレストランに行ったら、中国人に店を売ったとマダムが言う。スシ・レストランになるらしい。
紙に埋もれた日常が突然消え失せて、困惑する編集者の憂鬱を描く。
(東京創元社 1980円)