「清少納言を求めて、フィンランドから京都へ」ミア・カンキマキ著 末延弘子訳

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 著者はフィンランドのヘルシンキ生まれ。ヘルシンキ大学で比較文学を専攻し、大手出版社の広告編集者として勤めていた。入社後10年余を経た頃、決まり切った毎日の生活に飽き、つまらなくて死にそうになる。この退屈から抜け出そうと思った時に浮かんだのが、学生時代に読んだ清少納言の「枕草子」だった。そうだ、長期休暇制度を使って清少納言を研究しに日本へ行こう。本書は、この無謀とも思える思いつきを実行し、記録したユニークなノンフィクションだ。

 2010年9月、著者は助成金を得て憧れの京都へ到着。滞在期間はビザのいらない3カ月、場所は銀閣寺に近い「ガイジンハウス」。部屋代は月に4万円ほどという破格の安さだが、暖房設備が貧弱で後に寒さで苦しむことに。

 ともあれ1000年以上前に清少納言(著者は彼女を「セイ」と呼ぶ。紫式部は「ムラサキ」)が暮らした平安京の地に居を定めた。その時点でセイについて知っていることは文学事典に書いてある程度。本場の日本なら多くの情報が得られるだろうと思ったのだが、図書館にある文献はほとんどが日本語で英語文献はごくわずか。日本語ができない著者は早くも壁に突き当たる。

 それでもセイが着目したことの多くが驚くほど身近で、まるで自分に話しかけているかのように思える著者は、何とかセイの実像に迫ろうと、地道な探索を続けていく。

 同時に初めて接する生け花、茶道、歌舞伎などの伝統文化や豊かな自然にも引かれ、あっという間に時間は過ぎる。

 翌春、満を持して再度の来日を果たすが、そこで東日本大震災に遭遇する……。

 異文化接触の記録としても優れているが、「枕草子」は現在のブロガーの先駆けであり、フェミニズムが勃興して以降、欧米の詩人、エッセイスト、映画製作者、ミュージシャンなど幅広い分野で「枕草子」を取り入れているとの指摘には目を洗われる。随所に「枕草子」からの言葉が引かれ、知らず知らず清少納言という女性が身近に感じられていく。 <狸>

(草思社 2200円)

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