やさしく解説 最新おもしろ古典本
「ラノベ古事記 日本の英雄と天翔ける物語」 小野寺優著
「いつかはチャレンジしたい」と思ってはいても、なかなか手を出せないのが古典と呼ばれる作品の数々だ。本好き、読書好きな人でも、その敷居の高さにひるんだり、手に取ったものの挫折した経験がある人も多いのでは。そこで今週は、古典に興味はあれど、なかなか一歩を踏み出せない人たちにおすすめの5冊を選んでみた。
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日本最古の歴史書「古事記」をラノベ風に訳した人気シリーズ。編纂者のひとり稗田阿礼が、女帝・元明天皇に完成した古事記の内容を面白おかしく語るという設定だ。
第3弾の本作では、第12代景行天皇から第15代応神天皇までの物語が語られる。
景行天皇は、先代の垂仁天皇から「好きなものなんでもあげる!」と言われ「皇位」と答えて兄を差し置き即位。しかし、息子のオオウスに嫁候補の美女姉妹を横取りされてしまう。その兄を殺して平然としている弟のオウスの天然ぶりを恐れた景行は、彼を熊襲国のクマソタケル兄弟の征伐に向かわせる。オウスは女に成りすまし宴席に紛れ込みクマソタケル兄弟を成敗。このオウスこそが日本初の女装男子で、かのヤマトタケルだ。
そんな古代史のヒーロー誕生からその死までを描く景行天皇編をはじめ、全編ラノベ言葉で展開。読みやすく分かりやすく、古事記の印象が一変。早く続きが読みたくなる。
(KADOKAWA 1540円)
「女子大で和歌をよむ」 木村朗子著
源氏物語などの平安宮廷物語に和歌はなくてはならないもの。とばして読んでもストーリーを追うのには支障はないが、当時の読者は歌こそが場面のハイライトシーンと感じていたはずだという。歌あってこその源氏物語は、いわばミュージカルのようなものともいえる。
本書は、そんな源氏物語をはじめ、伊勢物語と和泉式部日記の3作を和歌にスポットをあてて読み解いていく古典講義集だ。
源氏物語の読みどころのひとつが、光源氏と父親である帝の後妻・藤壺が詠む歌だという。というのも2人の秘密の関係は読者には知らされているが、作中ではわずかな人物しか知らず、秘密を分かち合う読者は2人の関係がバレるのではないかとドキドキしながら読み進めることになる。
藤壺が光源氏を思って密かにうたった歌などを紹介しながら、そんな作中歌の楽しみ方を解説。
講義の合間には現代短歌も紹介され、三十一文字の豊穣な世界にいざなう。
(青土社 2640円)
「古典を読んだら、悩みが消えた。」 安田登著
論語をはじめ、人々に長く読まれ続けた古典は人生の危機に直面したとき、生きているのが苦しくなったとき、生きる知恵を教えてくれるという。心の処方箋として古典を読み解くブックガイド。
孔子とその門人による言行録である論語は、後に国家の学問にもなったが、現代人のイメージとは異なり、本来は差別された人や社会的に弱い人が生きていくにはどうしたらいいかが書かれたものだという。その論語の中心となる「礼」は、他者とのコミュニケーションの方法や、自分自身を変えるための方法を説いた、人間関係をうまくいかせるための魔法のツールだそうだ。
さらに、自己嫌悪に陥ったときや、皆と同じことをするのが苦手などの悩みにどう向かうべきかを論語に教わる。
他にも、毎日に息苦しさを感じているなら「古事記」、世の中になじめないなら「おくのほそ道」など、それぞれの悩みに応じて今を生き抜くヒントを各古典に学ぶ。
(大和書房 1650円)
「源氏物語解剖図鑑」 佐藤晃子著
約1000年前に紫式部によって書かれ、世界最古の長編小説といわれる源氏物語全54帖のストーリーと読みどころを簡潔にまとめたイラスト図鑑。
第1帖「桐壺」は、主人公光源氏の誕生から12歳までを描く。帝の寵愛を独占した桐壺更衣は、周囲から嫉妬され、心労で死去。残された3歳の皇子が光る君と呼ばれた光源氏だ。帝は溺愛する皇子が皇位継承争いに巻き込まれることを恐れ、皇族の身分から離れさせ、源姓を与える。12歳で元服した光源氏は、左大臣の娘・葵上と結婚する。
その後、33帖「藤裏葉」までの第1部で、光源氏が栄華を極めるまでが描かれる。41帖「幻」までの第2部では、光源氏の苦悩に満ちた晩年が、そして54帖「夢浮橋」までの第3部では光源氏の息子・薫が主人公となり、子・孫世代まで約70年余りの物語がつづられる。
個性的な登場人物たちの相関図をはじめ、当時の風習や文化、信仰など平安貴族の基礎知識を親しみやすいイラストとともに紹介。2024年の大河ドラマの予習に、原作や現代語訳にチャレンジする際の副読本にも最適。
(エクスナレッジ 1760円)
「『諸行無常』がよく分かる 平家物語とその時代」 濱田浩一郎著
「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」。この有名な書き出しで始まる平家物語は、平安末期の源平争乱を描いた軍記であり、平清盛を中心とした平家一門の興亡を描いた歴史物語でもある。
本書は、その名場面をピックアップして現代語訳すると共に、史実と照らし合わせながら物語の背景を詳細に解説してくれる名作古典テキスト。
清盛の祖父・正盛と父・忠盛は、白河法皇に仕え、各地の受領(国司)を歴任し、豊富な資金力を持っていた。忠盛とある女性との間に生まれたのが清盛だが、その女性が一説では法皇の寵愛を受けた祇園女御といわれている。ゆえに清盛は法皇のご落胤だともいわれ、平家物語でもその説をとっているが、女御の妹が清盛の母という説もあるそうだ。
そんな清盛の出生の謎からその死、物語の第2の主人公・木曽義仲、そして壇ノ浦の戦いと清盛の息子・宗盛の死、娘・建礼門院徳子のその後まで。全12巻の巨編を一冊に凝縮。
(ベストブック 1540円)