「出セイカツ記」ワクサカソウヘイ著
著者はいつも「不安」に脅かされていた。将来、飢えたり、住む所を失ったりしたら……。
そんなとき、近所に住む悦子さんが声をかけてくれた「草、食べない?」。悦子さんは野草を摘んで天ぷらにするのが趣味なのだ。「なるほど、草ですか……」
著者は家も失い、食いつめて河原で草を摘んで食べる自分をいつも想像していた。だが、野草天ぷらを食べて驚いた。おいしい。悦子さんが「お金がなくなっても野草を食べればいいんだもん」と言うのを聞いて自分を縛っていた呪縛が解けた。著者の不安は「まっとうな衣食住」という呪いから生まれているのだ。
「社会の当たり前」をユニークな視点から見直すエッセー。
(河出書房新社 1705円)