「白蕾記」佐藤雫著
「白蕾記」佐藤雫著
摂津の国に生まれた村医者、億川百記の長女、八重は、父が見込んだ大坂の蘭方医、緒方洪庵に17歳で嫁ぐことになった。洪庵の開いた適塾の塾生は八重とさして年が変わらないが、これからは洪庵の妻として彼らの世話もしなくてはならない。
洪庵は武家の三男だが、体が弱く、武芸も苦手だったため養子の話も来なかった。幼い頃、疱瘡(ほうそう)にかかり、懸命に治療してくれた医者が疱瘡は一度かかれば二度とかからないと教えてくれた。それなら疱瘡に苦しむ者を治療することができると考え、医者になったと八重に言った。
洪庵は西洋から伝わった種痘で疱瘡の患者を救おうとするが、幕府は西洋との交易を制限し種痘を入れようとしない。
予防接種を広めて人々を救おうとした蘭方医夫婦とその門下生の闘いを描く歴史小説。
(KADOKAWA 1870円)