「見果てぬ王道」川越宗一著
長崎で舶来品を扱う梅屋商店の養子である庄吉は、子どもの頃、川に落ちて死にかけたが、棺桶の蓋が打ち付けられる寸前に蘇生して助かった。
ごろつきの白ドッポ組を懲らしめたことで名を上げ、店に押しかける人々を避けるためにアメリカに行ったということにした。だが、本当にアメリカに行きたくなり、梅屋商店の持ち船にもぐりこんで上海に渡るも、病を得て帰国する。
19歳のとき、アメリカに留学しようとするが、途中で船火事に遭い、挫折。26歳で再び上海に渡る。やがて香港で写真館を開き、南洋開発のための移民事業にも携わるようになる。ある日、写真館に中華の革命の記念にと、男が写真を撮りにきた。その男は「孫文」と名乗った。
中国の独立を目指す孫文を支援した実業家を描く歴史小説。
(文藝春秋 2090円)