「湖上の空」今村翔吾著
人気歴史小説家によるエッセー集。
表題作は、京都出身の著者が現在、居を定める滋賀の地元情報誌に連載した掌文を編んだ章。
専業作家になっても、10年前に以前の仕事で移り住んだ滋賀に住み続けるのは、この土地が気に入ったことももちろんだが、歴史の題材の宝庫でもあるからだという。全国的にはいいイメージを持たれない石田三成も、滋賀では人気があり、ここに住んでいるからこそ、そのイメージの隔たりを知ることができ、自作「八本目の槍」を書くことができたとつづる。
ほかにも、父の故郷で鮎を追った少年時代の思い出や、ダンス講師時代の教え子との交流、そして直木賞を受賞しての思いまで。作家のリアルな心象に触れる。
(小学館 594円)