「言の葉は、残りて」佐藤雫著
権大納言坊門信清の娘・信子は、将軍・実朝の妻となるため都から鎌倉に向かう。父によると、この縁組は後鳥羽上皇の意向だという。上皇は血縁のある信子に将軍の子を生ませ、朝廷の力を取り戻したいようだ。
不安を胸に鎌倉に到着した信子の前に現れた実朝は、美しい少年だった。このとき、2人は13歳と12歳。信子は実朝の優しさ、実朝は信子の愛らしさに魅せられ、すぐに打ち解ける。実朝の母・政子は、そんな2人の姿に一抹の寂しさを感じる。
武芸よりも美しいものにひかれる実朝は、信子が都から持参した古今和歌集に魅せられる。和歌に親しむ中、実朝は武ではなく言の葉の力で世を治めたいと願うようになる。
実朝と信子の夫婦愛を軸に鎌倉幕府内の人間ドラマを描いた歴史小説。
(集英社 858円)