「悩める平安貴族たち」山口博著
「悩める平安貴族たち」山口博著
平安時代の歌集は、「古今和歌集」などの勅撰集のほかに、個人の歌集172人分が今に伝わる。本書は、個人歌集を含む平安文学を手掛かりに、歴史学ではとらえきれない王朝貴族たちの真実の姿に迫る古典読み物。
平安時代、親王家や上流貴族に仕える女性は「女房」と呼ばれ、紫式部や清少納言もそのひとりだった。関白内大臣の娘に私的な女房として仕えた清少納言は、代表作の枕草子で関白家を核とする華麗な貴族社会とそこに身を置く自身の幸せを描いた。一方、紫式部にとって、嫉妬による悪口や陰口が渦巻く女房社会は、心底憂鬱でしかたなかったようで、その心情を作品から読み取る。
ほかにも、色好みや男性貴族たちの権力争い、栄光と没落など平安貴族たちの人間ドラマを紹介。
(PHP研究所 1210円)