「ガーナ流家族のつくり方」小佐野アコシヤ有紀著
「ガーナ流家族のつくり方」小佐野アコシヤ有紀著
思えば無知で怠惰な10代だった。世の中にどんな学問があるかも知らず、やる気も自信もなく、もちろん成績も悪く、ふてくされていた。
もしもあの頃に戻れるならば、もっとがんばって勉強するよ。大学で文化人類学を専攻して、アフリカでフィールドワークをしてみたいなぁ。などと夢想する中年のわたし。
本書はそんなわたしの憧れの一冊、キュンキュンしながら読んだ。著者は東京外国語大学でアフリカ地域研究と文化人類学を学び、20歳でガーナに留学した。日本育ちの若い女性が単身ガーナに滞在したのだから、心身ともに大忙しだっただろう。その揺れや落ち込みの描写を含めて、みずみずしい筆致に引き込まれる。
著者が注目したのはガーナ人の家族観。村の中学生たちに「何人家族ですか?」とアンケートをとったら「105人」とか「数えたことないよ、50人ってことでいい?」なんて回答が返ってくる場面が印象深い。
かの地では血縁を超越して、世話をする(される)関係が無数にある。日本で祖父の介護を経験した著者には、その融通無碍な家族のかたちが「救い」に感じられたという。
ときどき挿入される埼玉県草加市のガーナ人コミュニティーのエピソードも魅力的だ。いまやアフリカルーツの人は日本にもたくさん住んでいる。彼らと親しくなれば、おおらかな家族観を垣間見られるに違いない。
と、ここまで書いて気づいた。わたしにもアフリカ出身の友人が何人もいるではないか。無知と怠惰を引きずりながらぼんやり生きてきたけど、案外願ったことの近くにいるのかもしれない。
(東京外国語大学出版会 2420円)