「ほぼねこ」RIKU著

公開日: 更新日:

「ほぼねこ」RIKU著

 空前のネコブームは、勢いを増すばかりで、昨年だけで飼い猫の数は新たに30万匹以上も増えたそうだ。

 そんなネコ人気にあやかってというわけでもないだろうが、こちらはネコはネコでもネコ科の大型動物たちの写真集。

 表紙にも登場する旭山動物園のトラ「シン」は、別ページで大きな舌で毛づくろいをしているのだが、その舌はネコと同じで、無数の突起でざらざらしている。

 大森山動物園のユキヒョウ「ヒカリ」は、後ろ脚で立ち上がって自慢の肉球を見せつけている。何ともかわいい立ち姿。

 ほかのページでは、まるで親が子に教えているかのように、一緒に爪とぎをしているライオンの親子「オリトとレイ」(旭山動物園)、前脚を伸ばしてストレッチしているかのように体を伸ばすユキヒョウのヒメル(いしかわ動物園)など。

 トラもライオンもユキヒョウも、体こそネコの何倍もあり、俗に猛獣と呼ばれる動物たちだが、遺伝子のなせるわざか、写真を見ていると彼らの表情やしぐさはネコと同じ。何より本家に負けず劣らず、かわいい。

 ミニチュアダックスフントを飼い始めたのを機に一眼レフカメラを手にしたという著者は、動物園で見たトラとユキヒョウの美しさに感銘。以後、会社員として働きながら、休日に全国の動物園に足を運び、主にネコ科の動物たちを撮影して、その作品をSNSで発表しているという。

 ならば、撮影は動物園の柵越しのはずなのに、そうとは思えぬほどその作品は、動物たちの生き生きとした自然体の姿を切り取っている。

 雪が舞う中、立派なタテガミを風になびかせてレンズを真正面から見つめる百獣の王。そんな風格を感じさせるオリト(旭山動物園)も、次のページでは腹を出して地面に寝転び、舌を出してくつろぐ姿はまさにネコそのもの。「ONとOFF」というタイトル通り、そのギャップがまた一段と見る者の心をわしづかみにするところは、ネコのツンデレと同じようだ。

 子育てが大変なのは動物界も一緒。鼻先にレイのパンチ(ネコパンチならぬライオンパンチ)をくらって思わず顔をしかめるオリトや、爪とぎ中にじゃれかかってきた子どもに首筋をかまれて悲鳴を上げる母ライオンのイオなど。百獣の王も子どもの予想外の行動にはお手上げだ。

 そのお返しでもないだろうが、別のページでは雪の中にたたずんでいたオリトが首をブルブルすると、横にいたレイの顔が親のタテガミに積もった雪をかぶって真っ白になってしまったマンガのような連写ショットもある。

 大の字で転がるユキヒョウ、ヒメル(いしかわ動物園)のもふもふのお腹に顔をうずめて「ネコ吸い」ならぬ「ユキヒョウ吸い」ができたらどんなに幸せなことだろう。それは決してかなわぬ夢だが、そんな妄想を抱かせてくれるネコ好きにはたまらない一冊。

(辰巳出版 1650円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…