(10)実のところ欲しいのは硯じゃない
「お客さん、霰、出来ましたよ」
小女に声をかけられてあわてて席に戻ったが、頭の中は目まぐるしく動いていて、蕎麦を手繰っても味が分からなかった。
おしまは蕎麦屋を出ると、その足で古道具屋を探した。
新右衛門町と箔屋町の間の道に、店を見つけた。間口の狭い埃っぽ…
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