「みんなしあわせ!保護猫ビフォーアフター」猫びより編集部編
「みんなしあわせ!保護猫ビフォーアフター」猫びより編集部編
空前の猫ブームともいわれる中、多くの飼い主はペットショップを介して愛猫を家に迎えているが、猫との出会いには保護猫という選択肢もある。
保護猫とは、野良猫や、多頭飼育崩壊、飼い主の高齢化などによって行き場を失った猫が、行政やボランティア団体によって保護され、新しい飼い主に受け継がれた猫たちのこと。
本書は、さまざまな事情を抱えながら新しい飼い主と巡り合った猫たちのビフォー・アフターを写真で紹介しながら、それぞれの出会いのドラマを飼い主に語ってもらうビジュアルブック。
高橋美香さんの愛猫シロは、仕事で通りかかることが多かった公園で近所の人からエサをもらって命をつないでいた元捨て猫。
初対面の印象は「うわ、なんて貧相な猫なんだ」だったが、やがて仕事がなくてもシロに会いに公園へ通うようになり、5カ月後には世話をしていた方たちと相談して捕獲。一緒に暮らし始めたという。
確かにビフォーの写真は頬がこけてなんとも情けない顔をしている。3年半の時間をかけて新しい飼い主や家猫暮らしに慣れたアフターのシロは、部屋の真ん中で、あおむけになって昼寝を満喫している。
スーパーの駐車場で段ボール箱に入れられて捨てられていたところを保護されたマリー。保護の1週間後に撮影されたビフォー写真は、生後2カ月前までの子猫に共通するキトンブルーという目の色をしているほど小さい。
飼い主のike2910さんは、当時は猫嫌いで、家にはインコのケイくんもいて同居できるか不安でいっぱいだった。しかし、「見放す=死んでしまう」と思い、飼う決断をしたという。
猫と鳥はお互いに苦手だと思っていたが、なんと今ではマリーとケイは大の仲良しで、アフター写真では、顔を寄せ合って仲良く写っている。
中には、その個性的な顔立ちと人柄ならぬ猫柄がSNSで大人気となり、いまでは飼い主さんが働く和菓子店で、クッキーやおまんじゅうなど関連商品も発売されている保護猫界のスターもいる。その名も「磯辺海苔男」くんだ。
頭頂部のおにぎりの海苔のような前髪模様と、切ない顔がトレードマークの海苔男くんは元野良猫。
ボロボロな状態で歩き、どんどんやせていく姿を見かねて保護しようとしたが、警戒してなかなか捕まらなかったという。試行錯誤を繰り返し、数カ月後の昨年1月の雪の降る日、ようやく保護。猫エイズキャリアーであることも分かったが、いったん、人間と暮らし始めると馴染むのも早く、いまでは飼い主のマリリンさんに甘えっぱなしだという。
そんな約50組の猫と人間との出会いのドラマを収録。愛らしかった子猫も、病気やケガでボロボロだった猫も見違えるほど変身。そしてどの飼い主さんたちも異口同音に猫との出会いによって人生が豊かになったと語る。本書は、猫たちだけでなく飼い主さんたちのビフォー・アフターでもあるのだ。
(辰巳出版 1540円)