著者のコラム一覧
金井真紀文筆家・イラストレーター

テレビ番組の構成作家、酒場のママ見習いなどを経て2015年から文筆家・イラストレーター。著書に「世界はフムフムで満ちている」「パリのすてきなおじさん」「日本に住んでる世界のひと」など。

「世界の美しいモスク」深見奈緒子著

公開日: 更新日:

「世界の美しいモスク」深見奈緒子著

 家から徒歩圏内のところにいい「やきとん」の店があり、ときどき友人を連れていって自慢する。肉の鮮度も焼き加減も抜群で、お酒の種類も豊富、そのうえ安くて最高だ。

 友人を案内する際、わたしは「そのやきとん屋さんの裏にね、モスクがあるんだよ」と言わずにはいられない。イスラム教の祈りの場と、豚肉を焼く煙が充満した店がこんなに近くにあるなんて。世の中はフクザツでおもしろいなぁ。日本にもイスラム教の人が増えて、この10年でモスクもどんどん誕生している。

 日頃は豚肉と酒にまみれている異教徒のわたしだが、これまで国内外のモスクにお邪魔する機会が何度かあった。その都度イスラム教徒の友人に教えてもらいながら、肌を隠し、スカーフで髪を覆い、手足を洗っておずおずと。大きくて立派な海外のモスクも、日本の路地にあるこぢんまりしたモスクも、清潔で穏やかな空気が流れている。

 さて本書は、世界の有名なモスクが網羅された珠玉の写真集。これがまぁ、じつに美しい。夕日に映えるミナレット(塔)、月を従えるドーム屋根、柱の彫刻、壁のタイル……イスラム建築の最高峰に圧倒される。

 いずれも歴史ある名建築だけに、付随する物語も興味深い。トルコではキリスト教会がモスクに改装され、スペインではモスクがカテドラルに変わった。シリアのモスクの一部は内戦で粉々に破壊されて今はもうない。

 そしてなにより巻頭の「基本解説」が、わたしにとってはお宝ページだった。モスクで見かける幾何学模様や植物文様のデザイン作法や意味がわかりやすく説明されていて、ワクワクした。

(エクスナレッジ 2200円)

【連載】金井真紀の本でフムフム…世界旅

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    百田尚樹代表《終わったら全部言う!》宣言 日本保守党3議席獲得で飯山陽氏との“暗闘”どうなる?

  2. 2

    泉房穂氏「日本のテレビ局は腐っている」とSNSに吐露…裏金自民とTV局は“握っている”のか

  3. 3

    自民裏金議員は半数以上28人が討ち死に…旧安倍派は“大粛清”も「5人衆」は首の皮一枚で4勝1敗

  4. 4

    元少年隊・錦織一清もジャニー喜多川を批判…それなのにNHK会長“欲望”優先の浅はかさ

  5. 5

    高市早苗「飲みィのやりィのやりまくり…」 自伝でブチまけていた“肉食”の衝撃!

  1. 6

    自民大物18人が“ただの人”に…武田良太氏ら大臣経験者が続々落選、現役閣僚2人は比例復活もかなわず

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    楽天・田中将大は今や球団の「厄介者」…大幅負け越し&パワハラ関与疑惑に年俸2億円超ダウン

  4. 9

    百田尚樹氏vs飯山陽氏 “日本保守党ドロドロ内紛”の船出…4月補選の蜜月はどこへ?

  5. 10

    バレーSVリーグ 石川祐希の凱旋試合プランも視聴率は大苦戦…背景に「箱」ではなく「単推し」