著者のコラム一覧
嶺里俊介作家

1964年、東京都生まれ。学習院大学法学部卒。2015年「星宿る虫」で第19回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞し、デビュー。著書に「走馬灯症候群」「地棲魚」「地霊都市 東京第24特別区」「昭和怪談」ほか多数。

語り継がれる民話 ~『遠野物語』~ ざしきわらしは怖ろしい存在でもあるのだ

公開日: 更新日:

ざしきわらしが離れた家は家族が死に絶える?

 さて、民話集の中でも白眉はやはり柳田国男の『遠野物語』でしょう。100を超える話が収められています。

『遠野物語』は多くの出版社から刊行されていますが、最新のものなら『遠野物語 全訳注』(講談社学術文庫)ですね。

 現在では妖怪として認識されているものでも、現地の人たちにとっては山の神さまでした。家単位に宿るので、各戸に違う神さまが祀られているので興味深い。オクナイサマ、オシラサマ、ゴンゲサマ、カクラサマなど数も多い。火を食べるなんて神さまもいます。河童なんかはメジャーなので馴染みがありますよね。

 ざしきわらしは、人に憑くのではなく土地や家に憑きます。単体ではなく一族のようなものなので『座敷童衆』と書いて『ざしきわらし』と読みます。個人名ではありません。それぞれの名前は、ちゃんと別にあります。

 遠野へ取材旅行に行った際に語り部さんとお話する機会がありましたが、ざしきわらしは幸運をもたらしてくれるだけではありません。怖ろしい存在だ、とのこと。

 憑いた家に富を与えてくれるという、都合の良い部分だけを印象に持つ人が多いのですが、怖い部分もあります。家に憑いているときは、その家に住む家族は富み栄えますが、離れたが最後、家族は全滅します。死に絶えます。たまたま外泊していて毒キノコにあたらなかった家族すら、時を置かずして死亡するという有様ですからね。家に憑いたときはご用心。

 出会うだけなら一時的に富をもたらしてくれるだけなので、もし出会ったら遊んであげましょう。

 超常的な力を持つのが神さまですが、恩恵の善し悪しは選べない。常に度を超えたリスクが背中合わせになっているのが説諭的ですね。

 そんな全国各地に伝わる民話に、私はたまらない魅力を感じるのです。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動