「無間の鐘」高瀬乃一著
「無間の鐘」高瀬乃一著
川岸でこぼれた米を拾って食いつないでいた権蔵は、十三童子に「無間の鐘」を突くか、と尋ねられた。その鐘を突いた者は現世では富貴となるが、来世は無間地獄に落ちるという。権蔵はその話に飛びつき、鐘をひとつ鳴らした。
権蔵は回船問屋大黒屋の次男だったが、吉原の花魁(おいらん)、嶋喜に入れあげて勘当された。どうにもならず実家に戻ると、父は三月前に死んでいた。番頭が手渡した金をもって権蔵は賭場に行き、そこで十三童子に出会ったのだ。
翌年、手軽な銭貸しを始めた権蔵は取り立てに行った裏長屋で、キリという娘に出会う。(「親孝行の鐘」)
人の欲望に応えてくれる鐘をめぐる6編の時代小説。 (講談社 2090円)