紡がれていく恐怖 ~『異形コレクション』~
現在57巻。全編書下ろしの「異形コレクション」
1冊で多くの作家の作品が楽しめるアンソロジーは、楽しむにはうってつけですね。
実話系だと各社から実話怪談が毎月のように出ていますが、創作系で現在もなお定期的に刊行されているシリーズを紹介しましょう。
『異形コレクション』シリーズは1998年から始まり、2011年に48巻で一度途切れたものの、再び2020年から続刊となって現在に至ります。その数、実に57巻。
各巻とも全編書き下ろしで、複数の著者による共著。編集主幹は作家の井上雅彦氏で、シリーズを通じて監修を務めています。
ホラー作品をただ積み上げているのではない。各巻ともに主題が決められているので、初心者でも好みのテーマが見つかりやすく、取っつきやすい。時代物やSF、喜劇など範囲も広い。旅行には『グランドホテル』『夏のグランドホテル』がオススメです。これは1つのホテルを固定して複数の作家が競作しているので、複数の視点から1つのホテルに関する話を楽しむことができます。
参加している作家たちもまた、水を得た魚のように自らの作風を思う存分爆発させているので、極めて尖った作品が収録されていることが特色。
ひとつだけ注意点。恐怖を嗜好とする作家がそれぞれのセンスを滾らせて腕をふるっているので、ディープな作品が多い。最大公約数的な作品は少なく、素数を並べたようなもの。読み手を置き去りにして、突っ走っています。いま、なにがどうなっているのかまったく分からない──そんな置いてけぼりを感じさせることもしばしば。なので、そこは覚悟してください。よしなに。