損害額30億円の巨額詐欺事件に巻き込まれた 矢沢永吉
ゴールドコーストの土地は矢沢の夢だった。彼はここにレコーディングスタジオや、後進を育てるための音楽スクールの入った24階建ての高層ビルを建設する予定で、31億円で土地を取得。さらにプロジェクトの準備資金として4億円を投じていた。これがほとんど全部パーになった。この被害金額は豪犯罪史上2位の記録だという。
矢沢は芸能人の高額所得番付の常連ではあったが、この巨額な資金の大半は銀行からの借り入れ。損害は矢沢ひとりにのしかかった。
矢沢はこの事実を知ってショックを受け、4日間酒びたりの生活だったという。しかし、意を決して税理士に相談すると「今の矢沢さんなら何年もかかるけど、返せない額じゃないよ」と言われて奮起する。日米でのツアーを敢行し、99年には「お受験」で俳優として映画初主演するなど新しいことにも挑戦した。
矢沢は前述の著書の中でこう語る。「オレは騙された自分のことがイヤじゃない。この純粋バカさ加減の矢沢がきらいじゃない」「サギに気付かなかった自分のほうがまともだ。そういう人間を陥れるヤツのほうが、さびしい人間だと思う。これは負け惜しみじゃなくて、そう思う」という心境だったという。