唐 状況劇場が寺山天井桟敷に殴りこみ大乱闘
しかし、騒動の発端はあまりにバカバカしいものであった。これに先立つ5日、状況劇場は渋谷の金王神社にテントを張って、演劇「ヘアー」を上演。初日に開演祝いとして寺山修司からの花輪が届く。だが、その花輪は葬式用だった。寺山によれば、かつて天井桟敷に唐から中古の花輪を贈られたことへの意趣返しを込めたいたずらのつもりだったという。
状況劇場のメンバーは「嫌がらせだ」とこれに怒る。そして酔いの勢いも加わって天井桟敷の事務所に押し掛けることになった。唐らは当初、寺山に説明を求めて、納得がいくようなら酒でも酌み交わそうというつもりだったようだ。だが、応対に出た天井桟敷の劇団員が突然訪れた唐らに驚き、「いません」と言うなりドアをビシッと閉めるのを見た状況劇場の劇団員は興奮する。
そこにちょうど寺山が帰ってきた。状況劇場のひとりが寺山の胸ぐらをつかむ。これで始まった乱闘騒ぎであった。
捕まった彼らは一晩留置場にぶち込まれた。翌朝すっかり酔いがさめた唐は反対側の鉄格子の中に寺山がいるのを見て「本当に悪いことをした」と土下座したという。