【対談】鈴木敏夫×権藤博 監督論から宮崎駿引退の真相まで
権「生涯一プレーヤーなんですね」
鈴「この前もこんなことがあったんです。私がある人に頼まれて、ナウシカの絵を描いた。私のいない時に事務所に来た宮さんがそれを見た。それがこれなんですけど」
権「鈴木さんも絵を描かれるんだ? うまいもんですね」
鈴「それはともかく、これを見て、『誰が描いたんですか?』と、それまでにこやかに談笑していたのに、表情が変わったというんです。わざと(主人公の顔に)口を描かなかったんですが、それが気に入らないんです。『口がない』と言って、『ペンを貸してください。ボクが口を描く!』とボクに断りなく勝手に口を入れちゃった。で、『では!』と言って、そのまま帰っちゃったというんです(笑い)。絵描きであり職人なんです」
権「それは凄い(笑い)」
鈴「やっぱり肉体って大きい。宮さんもいろいろやったんですよ。頭にハリを打ったり。そこにハリを打つと腕の調子がいいとかって。ほら、宮さんは白髪でしょ。そしたら、血が出て頭が真っ赤になっちゃって。やりすぎだって(笑い)。その点、高畑勲って人は不思議なんです。ジタバタしないですから。78歳なのに、最後の追い込みっていうと若い時と同じこと始めるんですよ。昼の2時、3時から朝7時まで。さすがに心配になって聞いてみたら、ボクらに内緒で点滴打ってたって。それでも普通に振る舞おうとする。まあ、2人とも特別な人です。2人とも本当にワガママ(笑い)」