話題の大人向けレーベル「FOXサーチライト」の勝算と期待度
シネマカリテを運営する武蔵野興業の執行役員、番組編成の小畑勝範氏(48)も「この国の映画の上映作品がどこも同じでは、面白くありませんからね」と続けるのだ。
ミニシアターを巡る環境は、昨年も銀座テアトルシネマやシネパトスなどが閉館し、決して明るくはない。今回の挑戦にも「無謀」との声が関係者にあるが、「潜在的な需要はあります」と平山氏は言い、「シネマカリテのような客席100席前後の劇場こそ、今の時代向き」と小畑氏も前向きだ。実際、第1弾「セッションズ」は好評だったという。元テアトル新宿支配人で、映像学校講師の榎本憲男氏の見方はこうだ。
「諸説ありますが、日本の単館ミニシアターは81年のシネマスクエアとうきゅうから始まったという見方が一般的です。欧州を中心としたアート映画を都内1館で上映し、他の劇場との差別化を打ち出しました。多少難解で分かりにくい作品であっても、その難解さに触れることが知的なおしゃれだと観客は受け止め、満足したものです。ところが今は普通に見て、面白くなければ相手にされません。カネを払った分、楽しませてくれというのです。メジャー作品は大がかりなスペクタクルでこれに応えようとしているのですが、観客の要望に忠実であろうとするあまり、人間の喜怒哀楽の表現が希薄になってしまったとも指摘されています。サーチライトのように人間ドラマをしっかり描く作品群も、それなりの市場はあるはずだし、あってしかるべきだと思います」