東電批判で打ち切り寸前…映画「あいときぼうのまち」の受難
この日のイベントに登壇。故・若松孝二監督の門下であり、同作の脚本を手がけた井上淳一氏がこう言う。
「3・11や原発を題材としたフィクションはインフレ状態であるのは事実だし、作品に力がないといわれたらそれまで。でも、あくまで想像ですが、映画の中で『東電』という実名が出ている。それがメディアの原発タブーに引っかかったのではないかと。架空の電力会社にするのではなく、原発事故の責任の所在をきちんと描きたかった。映画のエンドロールで実名表現について、憲法21条、『表現の自由、検閲の禁止』を明記したのはそのためです。表現の自由を自ら放棄することなんて、僕にはできない。表現者として、それはしてはいけないと思っています」
夏樹陽子や勝野洋といったベテラン俳優が重要な役どころを演じる。反原発を声高に掲げるわけではなく、各時代の家族の苦闘やラブロマンスも丁寧につむいだヒューマンムービーだ。一見の価値はあるだけに、打ち切り前にぜひ劇場へ。