すずきじゅんいち監督が語る 故・神代辰巳監督の圧倒的異才
神代監督とは77年公開「悶絶!!どんでん返し」で初顔合わせした。
「ロマンポルノで唯一男がポスターのメーンになった映画で、東大出のエリートサラリーマンがオカマになる話です。あの時はきれいなオカマさんを集めて主役のオーディションをやりました。でも、女装だけでなく男のシーンもあるんでうまくいかなくて、俳優さんにお願いしました」
そんな監督人生で、西村昭五郎、根岸吉太郎など名だたる監督25人の助監督を務めたが、神代監督だけは特殊な感じがしたという。
「他の監督と比べて圧倒的にすごいと。とても面白い現場でした。いつもニコニコしている。仕事というより何か楽しいことをやっている印象で、それは撮影を離れても同じでした。だからやっててすごく楽しかった」
結局、一度も怒鳴られなかったという。
「山口百恵の引退映画で市川崑監督の助監督についた時、いっぱい人がいるからいなくてもいいやって、僕は現場で見ないでセットの裏でサボってた。だってせりふを聞いてるだけで市川監督が何やってるか見えちゃってるんですよ。ところが、神代監督の場合、次に何が出てくるかわかんない楽しさがあった。ワンカット、ワンカットが発見の連続。ワンシーン、ワンカットで撮影し、どうやったら面白くなるかだけを追求してました」