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碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

漫画好きには堪えられぬ「浦沢直樹の漫勉」ディープな時間

公開日: 更新日:

【連載コラム「TV見るべきものは!!」】

 東京・世田谷文学館で開催中の「浦沢直樹展・描いて描いて描きまくる」(今月31日まで)を見た。

 迷路のような壁面を埋めつくす、膨大な量の原稿。しかもその一枚一枚が、当たり前だが、手で描かれた一本ずつの「線」で出来ているのだ。「YAWARA!」も「20世紀少年」も、こうして生み出されたかと思うと感動すら覚えた。

 そんな浦沢が、これぞという漫画家たちの“創作の秘密”に迫っているのが、「浦沢直樹の漫勉」である。4日間ほど、漫画家の仕事場に複数の定点カメラを設置し、ペンの動きからつぶやきまでを記録。1カ月後、その映像を見ながら、本人と浦沢が語り合うのだ。

 14年のシーズン0では「沈黙の艦隊」のかわぐちかいじ、昨年のシーズン1では「ゴルゴ13」のさいとう・たかをなどが登場した。そして今期の初回は、「ポーの一族」や「11人いる!」の萩尾望都だった。

 鉛筆の下書きをインクで引き直していくペン入れのシーンなど、つい見入ってしまう。何たる繊細さ。納得いくまで手を止めない集中力と執念。特にセリフ以上に登場人物の心情を語る、萩尾独自の「目」の描写が圧巻だ。

 また、浦沢の質問に答える形で、萩尾が「問題に直面している大人を描くのが、面白い」などと自己分析。漫画好きには堪えられない、ディープな時間が過ぎていく。
(上智大学教授・碓井広義=メディア論)

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