水谷豊が監督 映画「TAP THE LAST SHOW」の不安と期待
水谷豊が映画の監督をする。タイトルは、「TAP THE LAST SHOW」である。現役を退いた元天才タップダンサーと、若きタップダンサーたちとの師弟関係を描く。水谷は主役も兼ねるという。
俳優の監督業への進出は別段珍しいことではない。佐分利信や田中絹代の昔から、松田優作、桃井かおり、役所広司、今年なら黒木瞳。映画にこだわりをもつ俳優たちが挑戦し続けてきた。しかし、すべての人が興行で成功できるほど監督業は甘くはない。
“俳優監督”の作品が興行で難しいのは映画へのこだわりが強すぎて、その結果、凝りに凝った中身が観客を選んでしまうことが多いからだ。中身がわかりづらい場合もある。
だから、監督の水谷に期待したいのは単純に言って、はっきりしたわかりやすいドラマ作り。賞狙いの妙に気取った作品にはしないことが肝要だと思う。面白ければ自然と賞はついてくる。
水谷の「相棒」シリーズ(主演作、全3本)はともかく、その合間に出演した作品がそれほど成功していないのが気になる。とくに昨年の「王妃の館」は興収5億円に届かず、惨敗だった。新作の「相棒」の予定もあると聞くが、水谷にとっては今が「相棒」からの脱皮のときではないだろうか。「相棒」は持続してほしいが、俳優人生が円熟期に入った今の時期だからこそ、今度の監督作で、新境地を見せてほしいと思う。
代表作の一本に「青春の殺人者」(1976年)がある。青春の息吹が爆発した素晴らしい作品で、この熱いエッセンスをもう一度!!
(映画ジャーナリスト・大高宏雄)