“ポスト相棒”探るSMAP草なぎ「スペシャリスト」の異色性
今期は、独立騒動の渦中にあるSMAPのメンバーの主演ドラマが複数ある。草なぎ剛の「スペシャリスト」もその一つだ。
まず、無実の罪で10年間服役していた刑事・宅間善人(草なぎ)という設定が意表をつく。刑務所で学んだ犯罪者の手口や心理など、いわば“生きたデータ”こそが武器だ。
さて初回だが、首を吊った小説家の死体が自宅で見つかる。自殺かと思いきや、背中にはナイフが刺さっていた。奇妙なのはそれだけではない。密室殺人であり、見立て殺人であり、被害者が犯人を示唆するダイイングメッセージまで残っていた。ミステリー小説の定番要素がてんこ盛りだ。
宅間は捜査を開始するが、途中で容疑者の男が射殺されてしまう。しかも宅間がその犯人として裁かれ、刑務所に逆戻り。このあたりから、ベテラン脚本家・戸田山雅司の技が冴えまくる。登場人物が連続して死んでいくことで事態は二転三転。先が読めないので、見る側はワクワクしてくる。
草なぎは、飄々としていながら洞察力に秀でた主人公を好演。「コメとマイナンバーは一生ついて回るよ」などとつぶやく、ひと癖ある上司(吹越満)や、自由過ぎる宅間に振り回される女性刑事(夏菜)といった脇役もうまく生かされていた。
さすが東映の制作であり、大人が見ても楽しめる。“ポスト「相棒」”を探る戦略商品だ。
(上智大学教授・碓井広義=メディア論)