映画評論家・前田有一氏厳選 “大人が涼める”夏休み映画
夏休みシーズン到来! 今年からは新祝日の山の日(8月11日)が施行されるなど海に山に子供たちは楽しい毎日かもしれないが、働く大人はそういうわけにもいかない。だったら、映画館で束の間の涼とスリルと感動(+エロス)を味わってみてはいかがだろうか。
「ゴーストバスターズ」(米、115分)は1984年の大ヒット作を、主人公たちを全員女性に変更してリメークしたアクションコメディー。同じテーマ曲が流れるだけで懐かしさがこみあげてくるが、お化け退治のド派手さと格好よさは数段アップ。
「見た目はステキなのに頭の中身は空っぽ」なイケメンを救うため、4人の非モテ女子が奮闘する爆笑のストーリーは、よくあるヒーロー映画の構図を男女逆転させたアイロニカルなものでもある。その間抜けなイケメン役を「アベンジャーズ」のマイティ・ソー役クリス・ヘムズワースが、突き抜けたおバカ演技で演じているんだからシュールすぎる。
女の子活躍映画として推したいのが、人気女優ブレイク・ライブリーが全編ビキニ一枚で奮闘するスリラー「ロスト・バケーション」(米、86分)。サーフィン中に人食いザメに襲われたヒロインのサバイバル劇だ。シャネルのCMモデルとしても知られる身長178センチの超ナイスバディーを、胸尻ドアップでなめ回すオジサン目線のカメラワークをここは全面支持したい。
一方、日本の女優も脱ぎっぷりでは負けていない。「花芯」(日本、95分)では瀬戸内寂聴による原作小説の官能描写を凌駕するハードな不倫濡れ場を、村川絵梨が大熱演で見せる。保守的な時代に性欲に忠実に生きた女の生きざまを、かつてNHK連続テレビ小説「風のハルカ」の明るいヒロイン役で人気を博した彼女が堂々の初ヌードで演じる姿は衝撃的だ。
これとは対照的な、ピュアな恋愛青春ドラマ「君の名は。」(日本、100分)も見ごたえ十分。東京と田舎町に住む2人の見知らぬ高校生男女が、突然中身だけ入れ替わる胸キュンな展開。現在おそらく世界でもっとも緻密かつ美麗なアニメーションを作る新海誠監督の渾身作で、柔らかい光にあふれた日本の風景を圧倒的な映像美で堪能できる。
「ニュースの真相」(豪・米、125分)は、ブッシュの軍歴詐称疑惑を追ったテレビクルーたちの戦いを描くスリリングな実録社会派もの。安倍、麻生、高市と大臣クラスの経歴詐称が問題になった日本人にとっては、まさに他人事ではないタイムリーな内容だ。原作は事件を報じたテレビ局の元プロデューサー本人による手記で、細部のリアリティーには目を見張る。
最後に、この夏どころかここ数年で“最恐”と断言できるガチンコのショック映画「ライト/オフ」(米、81分)を。「心臓が止まるほど怖い」と話題を呼び全世界で1億5000万回再生されたネット動画を、そのテンションのまま81分間に引き延ばしたシャレにならない一本。暗闇を恐れる弟を守ろうとする姉に、明かりを消すと何かが襲い掛かる……。間違いなく途中退場者が出るであろう、ヤバすぎる一本だ。