ツマミ不要 桂小枝は落語を酒のアテに毎晩焼酎の水割りを
はた! と気づきましてん。お客さんの評価ばかり気にしとって、自分が落語を楽しんでないやないか? それで吹っ切れましてね。誰もしてないことしたろと思うてひらめいたのが白塗りやった。それで人気が出て、84年の「第5回ABC漫才落語新人コンクール」で最優秀新人賞、翌年には「第13回日本放送演芸大賞」のホープ賞をいただき、うまいこと波に乗れたんです。
そうそう。先代の林家小染さんには「アホほど飲みなはれ」と言われました。小染さんは無類の酒好きで、夜の部に高座があっても昼の部が終わると、寄席の外へ飲みに行きましてね。それでズルズルに酔うて戻り、それから高座に上がるような、ある意味、破天荒な飲み方されてましたが、その真意は「徹底して飲んで、本音で生きなさい」「自分の殻を破りなさい」でした。「噺家がカッコつけてもしゃあないで」。こう言うてた小染さんの遺言や思うて、今宵もグラスを空けるわけですわ。