37年間封印 岸田敏志が語る「菊姫」大吟醸にまつわる秘話
昨年がデビュー40周年だった岸田敏志さん(64)は日本酒が大好き。うまい酒を飲むために故郷・岡山の備前焼を習得して作陶を続けている。岸田さんが37年間、封印してきたお酒にまつわるエピソードとは……。
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生まれたのは岡山県のほぼ中央、落合という中国山地に囲まれた盆地の小さな町(現真庭市)。9人きょうだいの8番目に生まれた父と母はもとより、父のきょうだいはほとんど教職という教育一家でした。厳しかった半面、実家に集まれば、毎回笑いの絶えない酒盛りが始まり、物心ついた頃からお酒は楽しいもんだなと思って育ちました。
父が愛飲していたのは廃業してしまった酒蔵の地元の「うろこ」や勝山の銘酒「御前酒」。よく晩酌していたのを覚えています。僕も「何が好きか」と問われれば、イの一番で挙げるのは日本酒です。
日本酒をおいしいなと思ったのは1979年3月リリースの「きみの朝」が大ヒットして、仕事で全国を回るようになってから。特に印象深いのは石川県鶴来町(現白山市)の「菊姫」。ちょうど第1次地酒ブームが始まった頃、80年の春先だったでしょうか。ある雑誌の取材で蔵元へお邪魔した時のことです。