大島渚編<前編>トカゲにぶち切れ「お前、どこの事務所だ」
イタリア人のコルピ・フェデリコさんは熱狂的日本アニメファンで、欧州で日本アニメの70%ほどのシェアを押さえる版権会社を経営する実業家だったが、イタリアでそれまで非常に悪かった日本人のイメージを変えたのは1983年に公開された大島渚監督の「戦場のメリークリスマス」だという。特にイタリア人は、坂本龍一演じる陸軍大尉ヨノイに「こんな美しい日本人がいる!」と、しびれたという。坂本には、当時、一流ブランド店に押し寄せ、札束を握って高級品を買いあさる日本人のイメージを、映画1本で変えることがあるのだ、とフェデリコさんは思ったそうだ。
この型破りな大島さんにも笑える話がある。週刊ポストの連載でビートたけしが語っていたエピソードにこんな話がある。
「映画監督としての大島さんは、まさに狂気の人でね。もうトコトンこだわって撮影するんだよ。だけど、一方でムチャクチャ抜けてるところがあってさ。『戦メリ』のオープニングで、トカゲが数秒映ってからいなくなるシーンがあるんだけど、このトカゲがなかなかジッとしていられないんだよ。で、大島さんがトカゲにブチ切れて『おまえ、どこの事務所だ!』って言ったんだよ」