故内田裕也さんのロックな人生 破天荒の裏の“冷静と情熱”
「この野郎、ばか野郎、てめえ、こら!」
芸能関係の取り巻きにマスコミの記者やカメラマン、それと東京都の職員、ガードマンらが激突し揉み合う群衆の中心にひと際大声で怒鳴り、暴れまくる男がいた。1991年3月、当時51歳の内田裕也だ。芸能リポーターの城下尊之氏が振り返る。
「都知事選の告示というときでした。出馬を取りやめたアントニオ猪木さんの代わりとばかり、立候補を発表した裕也さんが事前手続きをしようとしたところ、取材させるさせないで揉めに揉めて、やじ馬も取り囲んでの大騒ぎに。裕也さんの、堂々とすべてオープンにすべしという主張からして、選挙のルールやシステムとぶつかり、すぐに警察沙汰。乱闘になっても、裕也さんは逃げないどころか、率先して突っ込んでいくんです。本当に暴れん坊でした」
ワイドショーのリポーターに扮した映画「コミック雑誌なんかいらない!」(86年)では、ロス疑惑の三浦和義氏に直撃して水をかけられたり、豊田商事会長刺殺事件を再現したシーンで話題になった。社会の、問題の、渦中に突っ込んでいくような精神を行く先々で見せていた。城下氏が続ける。
「本当に破天荒でしたけど、常識がないということではない。桑名正博さんがアン・ルイスさんとの離婚で芸能マスコミが殺到したとき、偶然に飲食店で桑名さんらと居合わせてしまった。桑名さんと共にいらしたのが裕也さんで、梨元勝さんや僕のことを見て『ぶん殴ってやる』と息巻く桑名さんを『まあまあ、ここは俺に免じて』と抑えていた。あそこで暴力沙汰を起こしたらどうなるか、分かった上で止めていたのだと思います」
大麻取締法違反(77年)に銃刀法違反(83年)、強要未遂と住居侵入容疑(2011年)と、警察沙汰も重ねたが、仕事では気配りの人でもあった。
「たとえば熱愛などの噂の出ている女優さんにマイクを向けていると、『おいもういいだろ!』と止めに入る。ではマスコミ嫌いかというと、そうでもなくて、きちんと取材を申し込むと、『近くに公園があるだろう』と場所まで指定して、対応してくれるんです」(城下氏)