追悼・内田裕也さん 名優にも臆さぬ行動力と自由な表現力
裕也さんの奥さまの樹木希林さんとも親しくさせていただきましたが、お2人の長女の也哉子さんが本木雅弘さんと結婚した時のことも思い出されます。披露宴では桑名正博さんと「裕也さんから娘が結婚するという電話がかかってきた時は驚いた。電話といえば、電気を止められたかガスが止まったが相場だったから。裕也さんに幸せが訪れていいのか」と笑い合っていたら、僕の顔を見るなり胸ぐらをつかみ「オレに黙ってデ・ニーロに会ったな!」です。
披露宴の前日のニュース番組で、僕が製作した映画「RAMPO」の全米試写会の様子が放送され、そこにロバート・デ・ニーロが参加していたことに腹を立て、希林さんが言うには「テレビを見ながらクソー、クソーとうなってました。披露宴の前日なのにね」。
裕也さん、希林さんご夫妻とは一緒に映画を作ったり、食事をしたりと密な時間を過ごしました。とにかく思い出は尽きませんが、映画「十階のモスキート」(83年)や「コミック雑誌なんかいらない!」(86年)など裕也さん流の自由な表現と暴走が見事にハモった時代がたしかにありました。
生きているときはこれほど大変で迷惑で早く死んでくれと祈る業界人が多かった人もいません。でも、いざ亡くなってしまうとこれほど寂しい人もいない。それが内田裕也さんでした。謹んでご冥福をお祈りいたします。
(談=聞き手・米田龍也/日刊ゲンダイ)