<3>潜水艦のスクリュー音識別するソナーマンに向いている
見事合格し、舞鶴101期生として入隊。訓練が始まった。私も長いこと演芸評論家をやっているが、弟子入り志願をした者に、師匠が「3年間兵隊に行ってくれば弟子にしてやる」と言ったことも、それを真に受けて、本当に自衛隊に入隊したという話も前代未聞である。入隊後のことについて才賀はこう語る。
「4カ月の新兵教育を終えると、はるさめという護衛艦に乗艦しました。最初の係は大砲の弾を運ぶ役。いろんな仕事を覚えるため担当を転々とするうち、上官に、『おまえは音感がいいから、潜水艦のスクリュー音を識別するソナーマンに向いてる。専門の学校へ行け』と言われて、江田島にある学校へ行きました。来る日も来る日も、『キンコーン』という音を聞き分けるだけで退屈でしたね。休憩時間になると気晴らしに志ん生師匠の落語のテープを聴いてました」
海上自衛隊での3年間は楽しかったのかどうか聞いてみた。
「授業は退屈でしたけど、航海は楽しかったですよ。いったん乗艦したら乗組員全員が運命共同体ですから、家族みたいな絆ができる。これだけは陸上や航空と違うとこでね。それに食事がおいしい。他に楽しみがないから、料理人は腕っこきだ。あたしらの時代は土曜の昼飯がカレーと決まってました。有名な海軍カレーというやつで、これがまたうまいんです」