<2>「3年間兵隊に行ってきたら弟子にしてやる」と言われ…
少年院の院長と幹部クラスの職員は2年に1度転勤がある。それにしても、才賀が慰問した沖縄と札幌の少年院の院長が同一人物だったとは驚きだ。
「野津院長とのご縁はこれで終わらないんです。それから2年後、横須賀の久里浜少年院を慰問したら、なんと、そこの院長が野津さん。行くとこ行くとこで再会する。院長に言われました。『あなたと私は見えないワイヤロープで結ばれてるねえ』と。全国に53カ所もある少年院に3回行って3回、同じ院長だなんてね。世の中にはこういう巡り合わせがあるんですな」
2度の慰問では院生に落語が受け入れられなかったが、三度目の正直とはよく言ったもので、久里浜少年院では反応が違った。落語の前に、才賀自身の身の上話をして、少年たちの心をほぐすようにしたのが功を奏したのだ。少年たちが笑顔を見せて、笑い声が聞こえてきた。どんな話をしたのだろうか。
「まず自分という人間を知ってもらおうと、弟子入り志願のことから、落語家になるために海上自衛隊に入隊し、3年間勤務した話をしたんです」