ジョン・チェスター監督「これからの農業は自然との共生」
――害虫被害、火事や暴風雨といった災害も避けられない世界なのでは?
「ええ。打ちのめされそうにもなります。でも、映画製作を決めた日に、こういうことがありました。農場には果樹園もあり、アプリコット、桃、プラムなどの果樹や農産物約200種を育てているのですが、アブラムシに覆われて枯れそうな木が、天敵のテントウムシの登場で健全に戻っていたのです。カタツムリの大量発生をカモが食べたり、野生のフクロウやタカまで来て、生態系のダイナミズムを目の当たりにして、問題が解決していく経験をしました。もっと大きなリズムにこそ、目を向けるべきですよ」
――アメリカには補助金が出たりするのですか?
「出るには出ますが、対象は商業的な作物。例えばトウモロコシなどの大規模農業にであって、再生農業あるいはオーガニック農業に補助金はありません。ですが、今は世界的に農業の移行時期だと思うのです。これからの30年、向かっていくのは自然との共生であり、より再生的なものしかない。今の農業の産業的なやり方だと土壌を破産させ、何も生産できなくなってしまいますから」
――今の流れを止められると本当に思いますか?
「はい。映画をご覧いただければ分かると思います。遅くはないけれど、やるなら早いうち、今だと言っておきましょう」
映画は3月14日から、シネスイッチ銀座ほかで全国順次公開。
(聞き手=長昭彦/日刊ゲンダイ)