小三治会長が大抜擢 21人抜きのスピード昇進で真打ちに
確かに、会長から弟子を抜擢すると言われたら、ひたすらありがたがるのが当たり前である。「当人に聞いてみます」と言える師匠はなかなかいない。
「『おまえ、どうする?』と聞かれて、正直『これは面倒くさいことになるな』と思いました。先輩を21人飛び越して、しかも1人で真打ち披露興行をするのは大変なことですよ。僕の中では、早くて3年後、5人くらい一緒になるものだと考えてましたから。それが大抜擢だと、妬まれたり恨まれたりして、人間関係がギクシャクするのも嫌だし。それまでに抜擢昇進した先輩の話をいろいろ聞いてましたからね」
一朝は先代春風亭柳朝の一番弟子だ。弟弟子の小朝が36人抜きで真打ち昇進した際、抜かれた者たちの嫉妬を知っている。一之輔の意思を確認したのは、彼を思ってのことであろう。
「でも、会長の抜擢を断ることもない。『喜んでお受けします』と答えたら、師匠はその旨を会長に伝えました」
かくして一之輔は、翌2012年3月、真打ち昇進を果たした。入門11年、二つ目になってわずか7年4カ月のスピード昇進は異例であった。(つづく)