完成度より「一発勝負」の勢いが大事 木梨憲武の芸論
その企画で出会ったアーティストの日比野克彦が、名古屋のパルコをプロデュースしており、「憲ちゃん、そこで個展やってみたら?」と誘った。「美術をずっと勉強していなくても、自分が表現したものが人に伝われば、なんだって好きにやっていいんだ」ということを日比野から教わったと木梨は言う(Yahoo!JAPAN「Yahoo!ニュース特集」18年11月16日)。
「一発勝負」で始まったアート活動だが、それに限らず、多岐にわたる木梨の活動に共通するものこそ、この「一発勝負」の精神だろう。
「歌もそうなんだけど、『普通に歌わなくていいよ』って育てられてるから。そういう、役割。番組も台本が一応あるんだけど、台本通りやらないで一発勝負、半分はアドリブ。あの時代はそれが求められてた。逆にマニュアルどおり普通にしてると、『あれ、どうしたの、今日。調子悪いのかな?』とか思われてた」(同前)
表現はこだわろうと思えば、どこまでもこだわることができる。そうした中で雑念も入ってくるだろう。だから、エネルギーの感じるままを大事にする。完成度よりも初期衝動と躍動感。その「一発勝負」の勢いが見るものに「伝わる」のだ。