弟弟子の立川志の輔に俺は一命を救われた
わかります、袴って? ホラ、歌舞伎役者さんがヒダヒダのついた富士山形に広がったロングスカートみたいなのをはいてるじゃないですか! あ、もっとわかりやすく述べるなら、♪酒はのめ~のめ~の黒田節を踊る時に、はくやつです!! まあ、ここまで細かく説明を加えなくても袴は大方の人は知っていると思いますが……じゃ、その方々にお尋ねします! 袴の畳み方を存じ上げている人は? ハイ、挙手でお願いしま~す!!
ホラ、ね! ほとんどの人が知らないでしょう!! って、そんなアンケートを取ってる場合じゃないのだ! いや、なかったんです!! なにしろ師匠は翌日には成田に到着するんですから……。一瞬にして酔いがさめた俺は談六兄さんをはじめ、袴を畳めそうな関係各位(師匠にこのことを告げ口しない者限定)に電話をしたけど……どーしてだれ一人出ないのよ~!!(涙)「ハ~ア、もうダメだ……すべての俺の悪行三昧が白日のもとにさらされるその時が来た~そして、遠山の金さんならぬ立川談志にお白州でその方に島流しを命じる! いや、破門といたす~!!」と裁かれるのか……イヤだ~!!
と、その時、一本の電話が鳴ったのだった。おそるおそる受話器をあげると向こうから聞こえるのは志の輔の声……「もしもし、兄さん、どーしました?」という、普段は分別くさいあのダミ声が透き通った天使の歌声のごとく聞こえたのだった。