こんな頼りない奴によくもこのコロナ地獄を任せてしまったもんだ
そんな時、♪サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ~と歌うクレージーキャッツの植木等の能天気な顔を思い出した。高度経済成長期に現れたのんきソングだ。「ニッポン無責任時代」なんていうアンチ真面目サラリーマン映画もあった。国民全員がせっせと金儲けに走っていた昭和を皮肉っていたのか。我らはその頃、まだ小学生のクソガキだったが、そんなバカ歌に調子を合わせていた大人をよそ目に、自分の将来になど興味もなく、夕飯のおかずがイモと大根の炊き合わせの一品だけでも文句を言わず、月に一度か母親が作ってくれるクジラの肉のすき焼きに舌鼓を打っていたのだった。あの頃のガキどもは毎日同じ服を着て、靴下の先に穴が開いていても気にとめず、頑丈に育ち、日々の喜怒哀楽にたくましく生きられたのだ。夜になれば、アメリカ製のテレビ映画の虜になり、学校の宿題も忘れて寝てしまって、朝起きると、また新しい今日が待っていてくれたのだ。
我が映画「無頼」の宣伝のために昭和30年代後半から40年代のことをあちこちの地方ミニFMラジオの電話でしゃべっていたら、若いDJたちから「元気だった昭和の時代を描くハチャメチャ映画をもっと作って下さいよ」と口々に言われた。欲望の向かうまま生きた時代は確かに今より何倍も人々に熱い心があり、何でも猛烈でシンプルで感動的だった。今「ファンタスティック!」と声を上げるものがない。そんなヤツと出会ってみたいよ。